月よ夢よ

親愛なるあなたへのお手紙として

SERAPHIM/菫と百合の日

 

 過日、百合の花びらみたいな純白を纏った彼女と過ごしたひとときは、あの花の黄金の蜜が放つ香りの眠りを誘うように甘い季節のなかで、わたしの夏のひとつとして、たしかにわたしの瞼の裏側に刻みつけられました。

 彼女と待ちあわせをし、ふたりでお逢いするのははじめてだったにもかかわらず、わたしたちは目と目があったときにお互いに微笑みかけ、日傘を忘れたわたしに、彼女は炎暑の陽射しから守るようにわたしを彼女の傘のなかに入れてくれました。

 白い夏のなかをわたしたちは、ひとつの傘のなかで笑いながら歩いてゆきました。

 

 わたしたちがむかったのは、乙女の秘密基地みたいなあの場所、SERAPHIMさんです。

 

 そこでわたしを出迎えてくれた<リボンの騎士>と名づけられたMutabilisさんのコサージュに、わたしはすっかり魅了されてしまいました。後ろ髪をひかれる思いで一度お店をでたものの、この花の残り香が夢のようにわたしのあとを追いかけてくるのを感じ、その力にはあがなえないことを覚悟し、彼女に相談し、もう一度お店に舞い戻ってお迎えさせていただきました。

 

 

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 彼女がもとめたのもまた、菫をモチーフとしたブローチでした。百合のアロマオイルは白い花びらみたいだった彼女に、わたしから贈らせていただいたものです。イタリアの修道院でつくられているというその香りは、わたしたちの夏の一日を象徴しているようでした。あの一日を「菫と百合の日」とでも名づけ、彼女とそのような同盟を組んでみるのも楽しそうです。

 

 

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 彼女とのおしゃべりは非常に刺激的でした。以前から美意識、好みなどが似ていることを感じていたのですが、ひとつの書物や芸術の話から連想ゲームのようにさまざまな題名や詩や作品がわたしたちのあいだで連鎖していくことは、わたしにはほんとうに得がたい経験で、わたしたちのあいだを飛びかった名前、多田智満子、ウニカ・チュルン、二階堂奥歯矢川澄子、高橋優子、中村苑子、葛原妙子、清原啓子、金子千佳、ルネ・ヴィヴィアンといったわたしたちの《女王》が、わたしたちのおしゃべりをそっと見守ってくれているような、不思議にやさしい夏の白い花びらの、あの百合の繭にくるまれているみたいに、甘やかな時間でした。

 

 遠方にいる彼女とは、また冬にお逢いすることをお約束してお別れしました。つぎのわたしたちの《女王》たちとの《お茶会》の舞台はゆりあぺむぺるさんに決まっています。

 

 また菫と百合の日を楽しみに。